増井の井戸
火災保険などもちろんない時代、「火事だ!」
天保年間(1830〜1843年)ころ、浪速の国、いまの大阪で突如、大きな火災が起こった。
あきないの都として栄えていただけに、人家が立て込んで、人も多い。
火勢はおりからの強風にあおられて、町並みを次々となめていく。
纏をかざし、縄張り争いにうき身をやつす火消しでは、とても手に負えそうもない。
家を焼かれ、家財道具を失った人たちは茫然自失、ただ、ひたすら、神の助けを祈るのみ。
その時である、まちの古老が夢枕に神のお告げを聞いた。
「西の丘、向日神社に霊験あらたかな井戸がある。その水をかけると火事はたちまちにして……」
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